目標金額を設定することと、その金額がノルマになる訳ではなく、ノルマを課した瞬間それが取引の足を引っ張る結果になりがち。
前回は私の経験などを踏まえつつ、そんな話を紹介しました。
「取らぬ狸の皮算用」という言葉があります。
まだ捕まえてもいない狸の皮がいくらで売れるのかを考える、ということで、株式投資をする際に考えておきたい言葉です。
もし狸をとることを生業にしている狩人だとしたら、狸の皮がいくら売れるかを想像するより、銃の手入れをしたり自分の腕を磨いたりする方が重要ですよね。
その方が狸を捕る確率は高くなり、結果として収入が高くなる可能性は高まるので、当然の意見ではないかと思います。
ただ、これはまわりから見れば当然の意見なんですけど、当事者になるとそこまで客観的に自分を見ることが出来なかったりします。
人間というのは困ったことに、自分を客観的に見ることが苦手なんです。
道具の手入れは面倒で手間がかかるし、自分の腕を磨くのにも時間と手間がかかる一方、皮算用をするのは楽だし仕事をしているような気にもなる。
そんな心理が働くので、どうしても人は楽な方に流れてしまいがちです。
株式投資でお金を増やしていこうと考えている方は、あまり将来得られるかも知れないお金について考えすぎない方が良い、という話でした。
それにつられて取引の内容とか取引する株の単位が変わってしまうと、取引自体が上手くいかなくなる可能性が高い、というのは前回紹介した通りです。
目標金額を設定する話と少し矛盾するのでは、という意見があるかも知れませんが、どこにフォーカスしているかが少し違います。
○目標を達成する為には損失を避ける必要があるのでルールを守って取引
×目標に早く到達する為にとにかく良い結果を出したい
偉そうなことを書いている私自身も、時々結果を出したいと急ぎすぎて望んだ方向とは逆の結果を出してしまいます。
こうして意見をアウトプットすることで、少しでも自分の行動が今よりも上手くコントロール出来るようになれば。
そんな気持ちもあって、ここでは色々と書いています。
皮算用の一例
目標金額を設定したら、何年でその目標金額に到達するのかを考えて、毎月どの程度の利益を出し続ければそれが実現するのかを計算する。
それを日割りすれば、目標金額と時期に対し、毎日どの程度の利益を出せば良いのかがざっくりですが掴めてきます。
ここでは少し極端な例として、目標金額を1億円に設定して、しかもそれを1年で達成したい、という無茶な目標設定で考えてみましょう。
こうした計算は株式投資を始める前にやってみて、計算だけで結構夢を見てしまう方もいるのではないかと思います。
まずは1億円を12ヶ月で割って、大体1ヶ月で840万円の利益が出ればOKということになります。。
取引可能な平日が1ヶ月に20日だと想定すると、1日に42万円の利益を出し続けることが出来れば、1年後には資金が1億円になる計算ですね。
1日の利益ノルマを見ただけで「無理…」となりそうですが、具体的にどうすればそのノルマを達成出来るのか。
そしてその為には資金がどの程度必要になるのかを考えてみると…
500円の株を2万株買って、その株価が1日で5%つまり25円上がり、その高値圏できちんと株を売ることが出来た。
そんな奇跡的な取引が出来たとして、差額25円×2万株=50万円の利益となり、さらに20%が税金で引かれるため、実際は40万円の利益ということに。
こんなに幸運な取引が出来たとしても、1日のノルマには少しだけ到達しないという、かなり厳しい現実が見えてきます。
こうしたラッキーパンチ的な取引が奇跡的に毎日続いたとしても、やっぱり毎月のノルマには到達しません。
だったら2万5千株にすれば目標に到達するのでは、という意見も確かにありますけど…
そもそもの話として、毎日の取引が全部思惑通りに行くという仮定がなかなか難しいというか、それが出来れば苦労しないというか。
実際は利益を出す日もあるけれど、思惑通りにならずに損失を出してしまう日もある、というのが現実です。
なので、計算に使う株数を変えたところで、前提とする「全勝」という部分が守れないので、その計算にはあまり意味がなくなってしまいます。
そもそも500円の株を2万株買うには1千万円の資金が必要なので、私を含めてこの仮定の話が実現出来ない方も多いでしょう。
と言うことで、こうした机上の計算は誰でも出来ますが、あまりにも現実からかけ離れていると言わざるを得ません。
こうした計算はまさに「取らぬ狸の皮算用」そのままですよね。
皮算用をした結果、さすがに1億円は非常に難しいという、かなり当たり前の結論が出ただけでした…
ある程度目標設定をすることは大事ではありますけど、そこに縛られて取引に影響が出てしまうようでは本末転倒なので、極力避けたいところです。
これは意外と難しいことなので、恐らく今後も言葉を変えつつ何度も出てくる話になると思います。